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札幌地方裁判所 昭和51年(わ)1027号 判決

主文

被告人を懲役一〇年に処する。

未決勾留日数中九〇〇日を右刑に算入する。

理由

(犯行に至る経緯)

被告人は、昭和二一年九月、当時の○○郡○○町で、父甲田某、母乙山春子の子として出生し、昭和三一年、母春子が甲野松男と婚姻した際、右両名の子として届出がなされ、両名の下で育った。被告人は、右甲野松男が暴力団の親分であるという家庭環境も手伝って中学生時から、非行に走り、非行が原因で高校を中途退学してからは、東京、仙台、札幌などで飲食店、ボーリング場、インテリア関係会社、芸能会社等で稼働したが、昭和四五年四月、詐欺、横領の罪により懲役一年に処せられ、翌四六年二月に出所した。被告人は、同年知り合った丙川梅子と同棲を始め、昭和五〇年一〇月同女と婚姻をし、翌年一子をもうけたが、被告人において家庭をかえりみなくなったため、昭和五一年八月協議離婚した。被告人は、昭和五一年一月下旬ころから覚せい剤を自己に注射して使用するようになり、まもなく覚せい剤の密売にも手を染め、覚せい剤使用量も漸次増加し、同年三月中旬ごろには、一月に一五回位も使用するようになった。その後一時、使用回数を減らしていたものの、同年六月から再び使用回数を増し、同年七月からは殆んど毎日のように使用し、一回の使用量も最大〇・一グラム位に達するようになった。被告人はその後も覚せい剤を常用していたが、肝臓をいため、また、知人が、覚せい剤常用の影響による異常な言動を示すのを目撃したことから、覚せい剤使用をやめようと思い、同年九月二八日から、母春子と甲野夏子(昭和二六年二月一五日、前記甲野松男と他の女性との間に出生した)の住む札幌市○○区○××条○××丁目××××番地の×所在、○○○○○ハイツ三〇八号室の母春子方で同居するようになった。しかし、被告人は、同居後数日を出ずして、再び覚せい剤を自己に注射して使用するようになり、昭和五一年一〇月一五日ころ、肝臓治療のため南札幌病院に入院したものの、入院中も覚せい剤を使用し、同月二〇日ころから、同病院を無断で抜け出し外泊をしたため強制退院の措置をとられ、その後は前記母春子方に住み、二日に一度位の割合で覚せい剤を反覆使用していた。

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  法定の除外事由がないのに、昭和五一年一〇月二九日午前三時三〇分ころ、前記母春子方居室において、フェニルメチルアミノプロパン塩類約〇・三グラムを含有する覚せい剤粉末の水溶液約〇・四ミリリットルを自己の腕部に注射し、もって覚せい剤を使用した

第二  同日午前四時ころ、同所において、前記甲野夏子(当時一五年)を強姦しようと企て、就寝中の同女の居室に押し入り、驚いて起き上がろうとした同女に対し、いきなりとびかかって馬乗りとなり、そのネグリジェやパンティを引き裂き、これをはぎ取って全裸にするなどの暴行を加え、その反抗を著しく困難ならしめて、強いて同女を姦淫しようとしたが、陰茎が勃起しなかったため、その目的を遂げなかった

第三  引き続きそのころ、同所において、前記母甲野春子(当時五三年)から前記第二の犯行を制止されたことに憤激し、同女の顔面を手拳で数回殴打し、同女の腰部等を数回足蹴にしたうえ、同所台所から持ち出してきた刃体の長さ約二一センチメートルの文化包丁で、殺意を持って、同女の胸部及び背部を一〇回位突き刺し、よって即時、同所において、同女を心臓刺創による失血のため死亡させて殺害した

第四  同日午前六時ころ、前記母春子方居室から逃げ出した前記夏子を追いかけ、前記○○○○○ハイツ一階に赴き、同階管理人室において、同マンション管理人丁川竹男(当時五九年)に対し、同マンションの二〇四号室及び二〇七号室の鍵を貸してくれるよう求めたところ同人にこれを拒まれたため憤激し、殺意を持って、かたわらにあったゴルフクラブで同人の頭部、顔面等をめった打ちに殴打したが、同人に加療約二か月半以上を要する脳挫傷、頭蓋骨陥没・線状骨折等の傷害を負わせたにとどまり、殺害するに至らなかった

ものである。

尚、被告人は、判示第二ないし第四の各犯行当時、覚せい剤の長期間の反覆使用による慢性中毒状態にあったところに、更に判示第一のとおり覚せい剤を使用したことにより急性中毒状態に陥り、その影響による精神障害のため、心神耗弱の状態にあったものである。

(証拠の標目)《省略》

(被告人の本件各犯行時における精神状態について)

第一当事者の主張

弁護人は、被告人の本件各犯行は、いずれも、覚せい剤の慢性中毒によって生じた妄想が、大量の覚せい剤使用による急性中毒症状下の意識変容や妄想的解釈の積み重ねによって誇大妄想体系へと発展し、その妄想体系に基づき、また、右急性中毒症状下の意識変容により外界の事実を正確に認知できない状況の下で行われたものであるから、被告人は各犯行当時心神喪失の状態にあった旨主張し、これに対し、検察官は、被告人が本件各犯行時において、覚せい剤による幻覚妄想によって全人格が支配されていたとは認め難く、また、本件各犯行の直接の動機が幻覚妄想によるものとも認められず、更に、本件各犯行当時被告人に意識の混濁はなく、記憶も殆んど欠損していないから、被告人が、各犯行時において、責任能力を有していたことは明らかである旨主張する。

第二当裁判所の判断

よって、前掲各証拠に基づき、先ず被告人の本件犯行前における精神状態につき検討し、次いで各犯行時における被告人の責任能力について判断することとする。

一  本件犯行前の精神状態

被告人は、判示のとおり、昭和五一年一月下旬ころから覚せい剤を継続的に使用し始め、同年七月ころからはほとんど毎日のように使用し、使用回数も多いときには一日に数回に及び、一回の使用量も最も多いときは〇・一グラム位に達するようになり、一時、覚せい剤の害悪を自覚し、使用をやめようとしたことがあったものの結局それも果せず、引き続き反覆使用していたこと、同年九月初めころからは、通行人が自分を注視しているように感じるようになり、同年一〇月二四・五日ころからは、自分の実体が人間以外の生物ではないかという疑問を抱くようになったこと、そのころから、サウナや喫茶店に行くと、周囲の人が自分に注目し、自分に関係のあることを話しているように感じたり、テレビや週間誌を見るとその内容がすべて自分に関係しているように感じたりしたこと、更に、母春子を始め、判示松男や友人丁田一男など被告人の身近かの者が全員被告人と同様人間以外の存在としての同族であって、被告人に対し、その実体をわからせるため種々の暗示を与えているのではないかと感じるようになったこと、そのことを確認するため、右丁田や母に対し、被告人の周囲の人間関係につき、異常なまでの執拗さで問いただしたり、あるいは丁田を、当時被告人が交際していた女性や知人に会わせてその反応を見ようとしたりするなどの異常な行動に出ていること、そのころの被告人の言動は、義妹甲野夏子の証言によれば、全く落ち着きに欠け、一貫性がなく、「猫が梅子の髪の毛みたいだ」など趣旨が不明で前後の会話と脈絡のない言葉が次々に語られていたこと、右異常性は同月二八日の夜に至って一層高まり、右丁田が同日午後九時半ころ被告人方へ電話をかけたところ、被告人の母春子から「錯乱状態だから来て欲しい」と言われ、同女と替って電話口に出た被告人が「ジュータンの色がオレンジだ」とか「猫が云々」などと全く意味の通じないことを一方的に話して電話を切ってしまったこと、その後母春子は右夏子に対し「様子がおかしいから寝る時は鍵をかけて寝なさい。」と言っていることが認められる(以上、被告人、丁田一男、甲野夏子の各供述)。このような被告人の異常な状態は、覚せい剤の反覆使用に基づき生じたもので、覚せい剤の常用による慢性中毒状態により生じた関係妄想的気分が次第に強まり、いわゆる関係妄想、誇大妄想へと発展して行く過程における異常言動であると認められる。

二  被告人の判示各犯行時における責任能力

(一) 判示第一の犯行について、

被告人は、本件犯行日の前日である同月二八日午後九時ころ覚せい剤を自己に注射した際、被告人のそれまで抱いていた前記のような疑問が進展したように感じたと述べるが、一方右のような疑問が浮ぶのは覚せい剤の作用によるものであることはわかっていた旨認めているのであり(第五回公判における被告人の供述)、右段階においては、被告人に確固とした妄想の存在は認められないところ、右注射後六時間以上も経過した判示第一の犯行時においては、覚せい剤の作用効果は更に減退していることは明らかである。そして、その際被告人は、覚せい剤を更に注射すれば前記のような疑問が解消するかも知れないと考えて判示第一の犯行に及んだというのであって、右犯行当時、被告人は、覚せい剤の慢性中毒状態下にあったとはいえ、いまだその責任能力に影響を受ける程の状態にはなかったと認めるのが相当である。

(二) 判示第二ないし第四の犯行について、

以下には、先ず右各犯行につき、妄想が犯行の直接の動機となったか否かにつき判断し、次いで右各犯行当時、被告人の全人格が確固とした妄想体系により支配された状態にあったか否かについて検討することとする。

1(1) 判示第二の犯行についてみると、被告人は、宇宙人としての同族である夏子に対し、宇宙食ないし栄養食である覚せい剤を性行為により注入しなければならないと思い、判示第二の犯行に及んだ旨述べるのであるが、被告人は右犯行に先立ち、前記のとおり、自己の実体は何かという疑問をはじめ、心に浮ぶ様々の疑問を解消するため判示第一の覚せい剤使用の犯行に及んだ直後、「何のことはない。自分の思ったとおりにするのが一番いいんだ。」と思い、同時に人間離れした気持になった旨述べており、少なくとも判示第一の犯行の直後においては、その際の自己の心理の変遷について自覚していたことが認められること、被告人は、判示第二の犯行において陰茎不勃起のため夏子のそばで横になっていた際、同女に対し「死姦をしたらどんなもんだべ」とか「俺はまだ強姦っていうのをやっていないんだ」と話しかけるなど倒錯した性欲の表明と認められる言動を示していて、被告人のいう目的とは一貫しないものが認められること、その他被告人の夏子に対する言動はとりとめのないものであって、被告人のいう目的が確固としたものではないことが推認されること、巷間、覚せい剤常用者間で覚せい剤使用者を宇宙人、覚せい剤を宇宙食と称する陰語が用いられ、被告人のいう目的が覚せい剤の常用者において着想しやすい思考であること等を併せ考えると、判示第二の犯行において、被告人のいう目的なるものは、当初被告人の念頭に浮動的に存在したことがあったとしても、その後も確固として存在したとは認め難い。被告人が実の兄妹同様にして育った夏子に対し淫らな行為に及んだ点において覚せい剤中毒の影響が窺われるものの、右犯行の直接的動機はその行為自体から推認されるとおり、被告人の性欲であったものと認めるのが相当であり、妄想が右犯行の直接的動機であったと認めることはできない。

(2) 判示第三の犯行についてみると、その攻撃の態様において常軌を逸していると認められる点は、被告人が覚せい剤中毒の影響下にあったことを窺わせるけれども、被告人は、夏子の悲鳴を聞きつけて、同女の部屋にかけつけた母春子が「何をしているの」と言いながら、夏子の上に馬乗になっている被告人の腕を引張りこれを制止しようとしたところ、春子に対し、「何を言ってんだばば」と怒鳴りながら判示第三のとおり同女の顔面等を殴打するなどの暴行を加えたうえ、更に、台所から包丁を持ち出してきて「このばば、早く死んじまえ」「俺はこの日を待っていたんだ」「俺はあと三年したら死ぬんだ」などと怒鳴りながら、同女を包丁で刺したものであることが認められ(夏子の供述)、右事実に照らし、判示第三の犯行は、夏子に対する強姦行為を制止されて憤激し、激情のおもむくまま行った衝動的、反撃的行為であると認めるのが相当であり、妄想が直接的動機となって敢行されたものとは認め難い。

(3) 判示第四の犯行についてみると、被告人は、逃げ出した夏子を追いかけて一階玄関付近に行き、同女を見失なった後、判示管理人室の前を通りかかった際、以前に母から、丁田たちが同じマンションの二〇四号室か二〇七号室に来ているという話を聞いたことがあるように思い管理人を起して右部屋の鍵の借用方を求め、これに応じない同人と押し問答を続けたあげく、同人の右態度を不満として、判示第四の犯行に及んだものであって(被告人の供述)、同人に対し、他人の部屋の鍵の借用を求めた契機においては、覚せい剤中毒の影響が窺われるものの、同人に対する攻撃は自己の要求に応じないことに対する憤激の念によるものと認めるのが相当であり、妄想が直接的動機になったものとは認め難い。

2 以上のとおり、判示第二ないし第四の各犯行は、いずれも、了解可能な動機に基づくもので、妄想が直接の動機となったものではないと認められるが、次に、右各犯行時、被告人の全人格が、覚せい剤中毒に基づく確固たる妄想体系により支配されていたものか否かについて検討する。本件においては、以上に述べた諸事情の外、被告人は、母春子を殺害したあと、「今まで母さんには苦労をかけたな」など死んだ母に対する哀惜の念を示す話をしたり、母春子を包丁で刺していた被告人を制止しようとして指を負傷した夏子に対し、「朝になっら病院へ連れて行くからな」などと言って同女の傷についての配慮を示したりしていること(以上夏子の供述)、被告人は、部屋から逃げ出した夏子を追いかけた際、それまで全裸であったのにガウンを着用し、その後、管理人室へ鍵を借りに行く前に、トイレで血で汚れた手を洗うという行動をとっていること(以上被告人の供述)、被告人は、判示第四の犯行の三〇分ないし一時間後に現場に駆けつけた警察官から、「君がお母さんを殺したのか」と尋ねられると、「そうだ、なりゆき上こうなってやってしまった」と答え、犯行前後ころの状況に関する一応の認識がなされていたものと推認される言動を示していること(緊急逮捕手続書、被告人の供述)、被告人は、犯行直後の警察による取調の際、母春子を包丁で刺したことを認めたが、調書に署名を求められると「殺人で取調べられる筋合はない」と言って署名を拒否した外、同年一一月四日まで、捜査官による取調に際し、身上経歴関係や犯行日の前日からの被告人の行動等についてはかなり詳細に供述するものの、被告人が夏子の部屋に入った時点以降の事件の核心に触れる行動に話が及ぶと、「何か食わせて欲しい」「知らない」などと言って話をはぐらかし、取調べに応ぜず、かつ調書への署名を拒否するなど自己に不利益な点については防禦的、回避的供述態度を示していること(三宅由一の供述、被告人の供述)、被告人の覚せい剤中毒による精神障害は犯行後すみやかに軽減し、三ヵ月後ころには消失するに至り、遺残していないこと、被告人は、犯行前後における被告人の内心の状況及び外的状況について、犯行後においても概ね記憶を保持しており、大きな意識障害はなかったと認められること、被告人は精神病の病歴等なく優れた知能の持主であること(以上各鑑定の結果、被告人の供述等)等の事実が認められる。以上の事実を綜合して判断し、かつ、覚せい剤中毒による精神障害においては、病的体験が全人格を支配する精神分裂病などとは異なり、妄想のような病的な体験があってもなお意思、判断の自由が残されている場合の多いことが特徴とされていることをも参酌すると、本件において被告人のいう妄想は一過的、浮動的なものであったと認めるのが相当であり、確固とした妄想体系が確立し、これによって被告人の全人格が支配されていたとまでは認めることができない。

3 以上のとおり認められ、結局右各犯行は、被告人の性格、即ち、自己顕示性が強く、攻撃的エネルギーが大であり、無遠慮に自らの欲求を強制したり支配的になる傾向、猜疑心が強いうえ被害的念慮を抱きやすく、時に気分が昂揚し、軽躁的となって自己内省や抑制の乏しい行動を取る傾向等の犯罪親和的性格(山上皓鑑定の結果その他)が、覚せい剤中毒の影響下にそれぞれの動機に基づいて発現したと認めるのが相当であって、犯行と被告人の本来の人格との結びつきを否定する訳にはいかない。そして、右各犯行がいずれもその是非善悪を容易に判断しうる単純な性質の犯罪であることをも併せ考慮すると、被告人は、右各犯行当時是非善悪の弁識能力及び右弁識に従って行為する能力が全く欠如した状態即ち心神喪失の状態にはなかったものと認められる。

4 しかしながら、以上に述べた事実の外、本件全証拠に鑑みると、判示第二ないし第四の各犯行時における被告人の精神状態は、覚せい剤の慢性中毒下に一挙に約〇・三グラムもの覚せい剤を摂取したことにより、急性中毒状態に陥り、その強い影響下において、判断力、抑制力が著しく低下し、是非善悪の弁識能力及び右弁識に従って行為する能力が著しく減弱した状態即ち心神耗弱状態にあったと認めるのが相当である。

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は覚せい剤取締法四一条の二第一項三号、一九条に、判示第二の所為は刑法一七九条、一七七条前段に、判示第三の所為は同法一九九条に、判示第四の所為は同法二〇三条、一九九条にそれぞれ該当するので、所定刑中判示第三の罪については無期懲役刑を、判示第四の罪については有期懲役刑を各選択し、判示第二乃至第四の各罪はいずれも心神耗弱者の行為であるから、判示第二及び第四の各罪については同法三九条二項、六八条三号により、判示第三の罪については同法三九条二項、六八条二号によりそれぞれ法律上の減軽をし、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により、最も重い判示第三の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人を懲役一〇年に処し、同法二一条を適用して未決勾留日数中九〇〇日を右刑に算入し、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項但書により、被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)

被告人の本件犯行は、判示のとおり、覚せい剤の常用により慢性中毒状態にあった被告人が、更に一挙に約〇・三グラムもの大量の覚せい剤を摂取して急性中毒状態に陥り、実の兄妹同様に育てられてきた一五歳の夏子を強姦しようとし、これを制止した実母春子を、残忍な態様の下に殺害し、更にマンション管理人に対し、殺害の意思の下に強度の暴行を加えて瀕死の重傷を負わせたというものであり、いずれの被害者にも全く落度はなく、被害者らに対する慰謝の措置が全く講じられていないこと、同人らは被告人の厳重処罰を望んでいること等に鑑みれば、被告人の刑事責任は極めて重大である。被告人が、本件第二ないし第四の各犯行時において、覚せい剤の影響により心神耗弱の状態にあったことは、判示認定のとおりであるが、心神耗弱の状態に陥ったこと自体、被告人が自ら招いた結果にすぎないことを軽視する訳にはいかない。従って、被告人が当公判廷において、改悛の態度を示していることを考慮しても、主文掲記の刑は免れないところである。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂井智 裁判官 仲宗根一郎 橋本昌純)

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